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  • いいねされた数だけパッと思いついた小説の初めの一文だけ書く

いいねされた数だけパッと思いついた小説の初めの一文だけ書く

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その日は雨が降っていて、だからというわけでもなく感じる寒気にクラウドは背筋を震わせた。腰骨の付け根から全身に広がっていく違和感があって、それが鬱陶しくて上を向いたまま深くて長い息をつく。けれど消えない倦怠感に縛られて未だ体は動かせない。眉間に皺を刻んだままクラウドは薄目を開いた。


セブンスヘブンの看板娘は忙しい。昨夜も遅くまで店を開けていたのに昼前には既に昨日の経理を終わらせて、マリンやデンゼルの昼食を用意する。洗濯と掃除を終えた彼らにそれを振る舞うと、二人が出かけている内に食材の買い付け、やってくる業者の対応、その日の分の仕込みにあたる。


病院にいる何週間かの間に右手の不自由さには大分慣れた。退院したと同時にバレットは指が使えない以上の不便さを痛感した。ある程度は覚悟していたが、バレットの新たな右手は人々たちにとっては大分奇異で恐ろしいもののようで、それを見つけた人たちはわかりやすく距離を取った。


そのことに気づいた瞬間、エアリスは自分の運命を呪った。恨んだことはあったし、子供の頃には嫌だと感じて駄々をこねたこともある。けれど自分の能力をここまで嫌悪し憎悪したことはなかった。だってこの能力は、母と──本当の母親との繋がりを感じられるもので、彼女が居なく鳴った後も彼女の存在を


仲間がナナキを『ナナキ』と呼ぶようになったのは、一行がロケット村に着こうとしている頃だっただろうか。あの時、久しぶりにユフィと合流し、彼女がいつものように幾度も『レッドXIII』の呼び名を噛んだ。『ナナキでいいよ』と伝えたのは、父親への誤解が解け、自分の名を誇らしく思えるようになった


リーブのおっちゃんの用事が終わった後は、セブンスヘブンに寄ることにしてる。マリンやデンゼルと遊ぶのは楽しいし、マリンの買い物に付き合うのも面白い。夕食をごちそうになった後は大抵三人で遊び疲れて寝ちゃうんだけど、時々ティファと閉店後の店で秘密の女子会を開く。あの旅の間も、あたしたち


もしもハイデッカーやスカーレットが生きていたら、今の自分をどう言うだろうと考えることがある。偽善者だと罵られるだろうか、相変わらず要領が悪いわねと皮肉られるだろうか。それもそれで愉快だろうと思うと自然に笑ってしまう。そんな彼らを手に掛けた罪悪を痛いほど自覚していて、リーブは顎に手


古代種の都は静かで、風のざわめきが葉のない樹を揺らす音がなければ時が流れていることにも気が付かないだろう。ルナハープに封じられていたこの場所は、あれ以降永き眠りから目覚めたままだ。けれど他のどの場所よりもヴィンセントに相応しい場所だった。ここなら、彼の眠りを妨げる者はいない。罪人


クラウドの第一印象は良くはなかった。ゾッとする色の瞳に大仰な剣を引っさげた、キレイな顔に不似合いな筋肉をくっつけた胡散臭い青二才。そんな奴が神羅の若社長をこともなげに『倒す』なんざ言うもんだから、頭のネジが外れっちまってるんじゃねぇかと呆れたほどだ。だけどオレ様は自分の勘に賭ける


『プレジデントの息子』として紹介されるのは、ルーファウスにとって余り気分の良いものではなかった。プレジデントの主催するパーティでは大抵幼いルーファウスの周りに大人が集まり、グラスを片手に少年の容姿やら言動やらを褒めたぐる。彼らの前で礼儀の良い優秀な子供を演じるのは、なにも彼らの


「おい、聞いてんのかよ、と」 レノの声掛けに英雄は答えなかった。たった今しがた死んだ神羅兵に背を向けて、長すぎる刀を片手にズンズンと先に進んでいく。シーツに血が染みこんでいくのを感じながら、レノはこときれた兵士を抱えて舌打ちをする。仕事を進めるには、これを置いて彼を追いかけなけれ


ルードはできれば、アバランチ狩りなどの持ち前の腕力を存分に発揮できる仕事につきたいと願っていた。けれど割合で言えば、要人の警護や監視にあてられることが多かった。それは寡黙で奥手で実直なルードの特性をよく理解されていたからの配置だったのだろうが、特に女性の要人の相手は御免被りたいと


髪を伸ばすと決めたのは、ツォンなりのけじめだった。前任のタークス主任からすれば年若で容貌の平坦なツォンが、どうすれば威圧的な雰囲気を備えることができるかを模索し、現場での動きやすさよりもタークスとしての印象を優先させた結果だった。なによりも誰よりも護るべき相手ができた。彼の障害と


ツォンさんが死んだと聞いた時、私は信じなかった。ツォンさんは憧れのタークスで、いつだって冷静で強かで優秀なリーダーで、そんな彼が死んでしまうはずがない。でも死んだ。殺された。クラウドたちに。私は怒ればいいのか泣けばいいのか恐れればいいのかわからなかった。ただ溢れ出る涙を止めること

【 END 】