妙な手首につきまとわれて俺はもう限界かもしれない。<05>

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 体を動かしていないと、募る快感を誤魔化せない。体を動かしてしまうと、自分が感じていることを伝えるようで決まりが悪い。
 動きを止めると、蓄積していく快感を痛感することになる。そのまま体を預けていたくて、だけどそれでは勝つ前に負けを認めることになる。
 それでも俺は、やはり腰を揺らさずにいられなくて。なのに、いくら俺が逃げようとしても、指は決してソコを離れない。自由自在に俺を追いかけ、変わらぬ振動を刻みつける。
「は……ァン……!」
 まだ何分も経っていないはずなのに、俺のカラダはもうコレを快感と知ってしまった。くすぐったいような刺激がペニスを揺らし、根本の方で並んだモノがひゅくんと疼く。
 そんなところをつついていないで、もっと強い、わかりやすい刺激が欲しい。気がつくと、俺の声はすっかり濡れてしまっていて、胸を上下に弾ませながら、か細い息を吐き散らしていた。
「はぁ…ッ、は……んん……ッ」
 自分のいやらしい声に気づいて、俺は息を止めようとした。けれど、そう長くは続かずに卑猥な呼吸を洩らしてしまう。
 そんな俺のペニスには、依然奴の指先が貼りついていた。カリを引っ掻き、裏筋を指の腹で刺激して、ペニスが揺さぶられる度、脳天まで蕩けるような気持ちよさが突き抜ける。
「気持ち良くて、ジッとしてられないのかな」
 ビクリと爪先を跳ね上げた俺の腿を親指で撫で、奴は言った。今一体、俺は何枚の掌に捕まっているのだろう。その何枚もの掌以上に、性器に触れるたった一本の指が俺を身動きできなくする。
「ちが……は……、ン──ッ」
 口を開けた途端、甘い息が洩れそうになって、俺はゾクゾクと背筋を伝った痺れに体を震わせた。これじゃあ、文句も言えやしない。爪先を丸め、内腿を震わせて、拳を握って気持ち良さを噛み締めている俺のペニスを、指はやはり小刻みに絶え間なく刺激していた。
「心配しなくても、ココから離れたりしないよ」
 そう言われて、汗がじわりと滲むのが分かった。強すぎる刺激なら堪えようもあったろうが、弱くて鈍い快感に、俺は確実に追い詰められ続けている。
「たっぷり、気持ち良くなってね」
 俺の気持ちと体の変化を、奴は知っているはずだ。手首を、腿を掴んでいる掌から、一番露骨に反応しているペニスに触れる指先から、それを感じているはずだから。
 体の震えを堪えた結果、俺は身を縮めて、全身で奴の指の振動を感じていた。裏筋から響く痺れは体中に広がって、元ソルジャーの俺の肉体を卑猥に塗り替えていく。
「ふ……、ぁう……ッ」
 俺は、時折ビクリと体を弾ませ、荒い息を必死で押し殺していた。触られているのは一箇所だけのはずなのに、俺の体の内側を断続的に興奮が迸る。
 もっと強く、もっと早く、ソコをイジってくれたなら──。だけど、そうされたらきっと、すぐに達してしまうだろう。
 もどかしい、たまらない、決して止めて欲しくない。
 初めての快感をじっくりと味わわされて、俺は、当初の目標を見失っていた。
「はぁ…ッ、あ……!」
 腹がうねって、時折びくんと腰が大きく跳ね上がる。腫れ上がったペニスが熱くて、脈打つソコを一思いに絞め上げて欲しい。
「は…ッ、こそ、ばぃ……」
 拳を握り締めたまま、体が勝手に硬直して、身動きができなかった。切なさが漣のように駆け抜けるから、俺は頭を揺すって、小さな声で呟いた。
「──っと……、強く……ッ」
 自分の言った言葉の意味を、俺は自覚できていなかった。ただ、そうして貰えればもっと楽になれるだろうと思ったのだ。
 手首を掴んでいた指が、僅かに緩んだことにさえ俺は気づけなかった。ずるずると腕が動かされて、頭の上から顔の両脇へと降りてくる。
 脇が緩まり、少し呼吸も楽になった。ほう、と息をつく暇もなく、思いがけない囁きが俺の耳から忍びこんだ。
「強くしていいの? 気持ち良くなっちゃうよ?」
 びく、と、体をしならせ、俺は声も出せないで首を倒して戦慄いた。こいつ、この為に腕の位置をずらしたのか。まんまと策に嵌ってしまって、悔しさを噛み締めた俺のペニスをするりと撫で上げ、奴は指先を俺の先端で潤んだ場所に被せてきた。
「ぁ──ッ、違、今のは、なん、でも……ッ」
 俺は、急いで否定しようとした。たった十分、耐えてやると誓った俺が、音を上げたのだと思われたくない。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ゃめろ、ッひ…、ぅあ──!!」
 ぐり、と、指先が俺の小さな孔を抉るから、俺は肘を持ち上げて爪先を突っ張らせた。鮮烈な刺激が全身へ突き抜けて、体をバタつかせたいのに硬直して動けない。
 俺は目を瞠いて、指の所業を凝視していた。赤く腫れたペニスに指が食いこんで、左右にしなってまるで踊っているかのようだ。
 根本からぶるりとソレが震え立って、押さえこんでくる指先に、くちゅ、と、溢れたモノを塗りつける。人差し指がくりくりとソコに入りこもうとするから、俺はその度ビクついて、首を左右に揺さぶった。
「ッは……、なせ……、ぃ、痛──ッ」
「嘘ばっかり」
 押さえこまれていなければ、きっと俺は大きな音を立ててしまっていただろう。ただでさえベッドマットがギシギシ軋んで、俺の背中に滲んだ汗を吸い上げていく。
「気持ち良いんだね。我慢汁溢れて、トロトロしてるよ」
 人差し指が、俺の泣いたペニスの先を、くり、くり、と穿っていた。それだけで俺の体は跳ね上がり、爪先が空気を蹴った。
 孔を散々イジられ続けて、なんだかなにかを洩らしてしまいそうな気がする。奥歯を噛み締め、危険な衝動をやり過ごそうとする俺から、す、と離れた指と俺とが透明な橋で繋がれていた。
「ほら、あと五分切ってるよ」
 粘ついたモノで濡れてしまった指先が、俺のペニスをつついて揺らす。痛いような熱いような、痺れるような感覚が隅々まで行き渡り、体が焼けているようだ。
 まだ、半分しか経ってないのか。こんな感覚、あともういくらも耐えていられるとは思えないのに。
「後もう少しだ。頑張って我慢してね」
 俺のペニスを撫でる指の言葉が、残酷な科白に聞こえた。柔らかな愛撫、優しげな声に絆されて、緩んだ鈴口からは新しい露がじわりと滲んだ。
「ゃめ……ろ……ぅあ……ッ」
 俺の声は、強がることもできないほど縮こまってしまっていた。胸が弾んで、言いたいことを声に出すこともできない。
 これ以上されていると、吐き出したくなってしまう。いやもう既に、出してしまいたくなっている。
 濡れた指先が再び裏筋を刺激し始めて、俺は気持ち良さを噛み締めながら、爪先まで突っ張らせて積み重なった快感に身悶えていた。
「はぁ、は……ぁあ……」
 内腿を強張らせたまま足を大きく広げていると、ペニスに伝わる振動で背筋が揺さぶられるのがわかる。握られているわけでもないのにソコが熱くて仕方がなくて、静かに募る欲望が俺の奥で疼いている。
 イきたい、出したい、もっと強く、めちゃめちゃにしてくれればいいのに。荒い息を散らしながら、俺は足の指を丸めて淫らな衝動を噛み殺していた。
「あと一分だから、そろそろ本気でいかせてもらうね」
 そう言うと、指は俺の裏筋に吸いついたまま、擦る動きを一層細かく、速くしてきた。鈍くて甘い刺激に俺はのたうって、背筋をひどくしならせたまま堪えきれない欲望がせりあがっていくのを感じていた。
「はぁ、ア──ッ、だめだ、こん、なの……ッ」
 汗ばんだ手を握りしめ、前髪を揺らして俺は言った。もう少し、あとほんの少しできっとイけるのに──。こんなモノを味わわされては、もう一秒だって耐えていたくない。
「もうちょっとだよ。頑張れ、頑張れ」
 俺のペニスに無慈悲な快感を刻むくせに、指は俺を励ますように声をかけた。濡れた指がピンピンと裏筋を弾くから、その度に跳ねるペニスがずくずくと疼いている。
「ふぅ、ッく……うぅ……ッ」
 いやらしいとは思うのだけど、腰が揺れてしまうのを我慢できない。もうすぐこの地獄のような責め苦から解放される。
 最後の十秒、待ち侘びていた終わりを奴は声に出して知らせてくれた。イきたい欲求が渦巻くせいで薄くなった意識の中で、俺はカウントが減っていくのを祈るように聞いていた。
「五、四、三、二……」
 堪えることに集中しすぎて、ゼロ、の音がやけに遠くに感じられた。擦られた場所が摩擦熱で熱くなって、疼くような痺れをジンジンと感じていた。
 びく、びく、とペニスが脈打ち、吐き出せなかった精液が俺の中で暴れている。疲れた体をベッドに沈ませ、汗で濡れた肌にシーツが吸いつくのを感じていると、俺に触れていた奴の手がそっと剥がれていくのがわかった。
「すごいよ、クラウド。よく我慢できたね」
 勃起したままのペニスから、押さえつけられていた腕から、足から、奴の重さがいなくなる。体が自由になったのに、俺は身動きできないで、重たい瞼を起こしながら喋る手首を探していた。
「約束だ。もうボクは、キミに二度と触らないよ」
 俺に掌を見せながら、指は言った。何枚もの掌が俺を囲んでいて、背中を起こそうとした俺は、ぞく、と、背筋をなにかが駆け抜けていくのを感じいた。
「ぁ……、ふ……」
 肌の上がざわめいて、皮膚の内側では行き場を失くした衝動が駆け巡る。触られていた場所が寂しくて、物足りなくて、恥辱も屈辱もどうでもいいほど、触って欲しくて堪らない。
「どうしたの? つらそうだけど、大丈夫?」
 俺に差し出された掌が、俺の頬のすぐ近くで俺のことを気遣っていた。けれど、決して奴は俺に触れてこようとしない。俺と交わした約束を、早速守ろうとしているらしい。
 少し顔をそちらへ寄せれば、柔らかな掌に頬を預けてしまえそうだ。そう思った俺が首を傾けても、手首は逃げるように離れてしまって、切なさが俺の胸を苦しめた。
「は……、ク……って…くれ……」
 弾け飛びそうなほどの欲望を抱えているのに、満足できないもどかしさでおかしくなってしまいそうだ。額を押さえて呟くと、ベッドの上で丸まる俺に指がそっと近づいてきた。
「なに? 聞こえないよ」
 けろりとした声で、奴は意地悪く俺に尋ねた。きっと、わかっているくせに──。そう思うと悔しくて、俺は奴を捕まえようと気怠く重い指を伸ばした。
「さゎって……俺を……イかせて、くれ……」
 欲情しきったカラダのまま、放置されるなんてまっぴらだ。逃げない手首を、ぎゅ、と握って、俺は口唇を噛み締めた。
 この手に触られるのが、自分でスるより何倍も何十倍も気持ちが良い。早くあの鮮烈で強烈な快感を味わわせて欲しい。
 予感だけで体の芯がずくんと疼いた。早く、早く、と、気持ちが焦って、掌が粘つきそうだ。
「いいの? あんなに嫌がってたのに」
「いぃから、はゃく、しろ……ぅあ──!」
 する、と、腿を撫で上げられて、妙な声を洩らしてしまった。先刻まで、俺を縛りつけていた掌が、今度は俺を善がらせようと一斉に動き始めている。
「キミ、ホント素直じゃないね」
 期待と興奮で、心臓が破れてしまいそうだ。シーツにしがみつく俺の体に掌が絡みついて、宥めるように肌を撫でて敏感な場所に近づいていく。
「まあでも、別に嫌いじゃないよ」
 捕まえていた手を離すと、そいつは俺の指の間に指を嵌めこんできた。ぎゅ、と握られ、掌が重なって、何故か俺は安心した。
 宙に浮いていた左手が俺のペニスの根本を握り、太さをはっきりさせるように、ぎゅ、と絞め上げてきた。あ、と、声を出した俺の睾丸をそっと包んで、ビクビクと震えるペニスに人差し指が近づいてくる。
「それじゃあ、いっぱい気持ち良くなってね」
 手を握って、頬を包んで、掌は俺に安らぎを感じさせる。それだけじゃ満足できない俺の体に、奴の手が期待通りの刺激をようやく交え始めた。
「は…ッ、ァ……ぁあ……!」
 頬から首筋、鎖骨を撫でた掌が俺の胸を揉み始める。掌に乳首が擦れて気持ちが良くて、ぷっくりと腫れたソコを指先にイジめられる。
 我慢したばっかりにイき損ねた俺の体は、与えられる快感を貪欲に求めていた。ひとつ残らず取り零すまいとカラダが過敏に働いて、先刻と同じ振動に腰が自然と動いてしまう。
「はぁ、ン……ッ、もっと……強く、シてくれ……ッ」
「大丈夫」
 恥を偲んで訴えたのに、奴の返答はあまりにつれないものだった。乳首を摘み、濡れた先端をつつき上げ、細かい快感を与えながら、裏返った足の裏を、指先で、つう、と撫でる。
「キミのカラダ、いやらしいから。強くシなくても、簡単にイけちゃうよ」
 くすぐったくて、もどかしくて、俺はカラダをくねらせた。今すぐにでも昇りつめてしまいたいのに、こそばゆいようなこんな刺激じゃいつまでかかるかわからない。
「無理、だ…こんな、じゃ……ぁう──ッ」
 そう言って俺が首を振ると、内腿をするりと撫でて、指は優しい声を出した。
「本当だよ。目を閉じて、ボクに任せて」
 俺は早くイきたくて、出したくて仕方がなかった。言われた通りに目を閉じると、俺は自分のカラダがどれだけ愛されてるかを思い知った。