妙な手首につきまとわれて俺はもう限界かもしれない。<06>

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 親指と中指に乳首が摘まれ、くり、くり、と、転がすように柔らかく捩じられる。右と左を苛みながら、尖らせた乳首の上に人差し指まで被さった。
 足の裏をくすぐった手が脹脛から内腿までを撫で回し、太腿と脛を降りて再び足の裏を撫でる。むず痒さが全身の肌を騒がせ、俺はカラダを動かしたい衝動と戦っていた。
「はぁ、ア……ぁン──ッ」
 じっとしていると、快感が少しずつ積もり積もっていくのがわかる。皮膚を伸ばされ、血管が浮き出るほど張り詰まったペニスの先を、指が幾度も幾度も擦り、快感を塗りつけてくる。
 ソコの温度が相手の指と同化した頃、裏筋に重なる指が親指に変わって、残りの四本がそっと亀頭に被さった。根本を押さえられたままさわさわと撫でられて、一度堪えた熱の波が一気にせり上がってきた。
「ハッ、は……ぅあ、あ……ッ」
 徐々に、段々、確実に、限界が近づいている。これまで俺が味わった中で一番深くて重い絶頂が、じっくりと融かされた俺のカラダを呑みこんでいく。
「だめ、だ…おかしく、な……ゃ……ぅあ……ッ」
 自分でシている時とは違う、圧倒的な予感がしていた。そんなものを味わった時、自分がどうなってしまうのか俺にもよくわからない。
「大丈夫だよ。ボクがずっと傍にいるから──」
 安心してイッていいよ、と、指は俺の手を握り締めた。気がつけば、胸もペニスも足も手も『気持ちいい』で溢れていて、溺れることを躊躇うほどの濃密な快感に、心とカラダを否応無しに絶頂へとのしあげられた。
「は……ぁ……ぁア────‼」
 覚悟も用意もできないまま、俺は息も出来ないほどの深い快感を味わった。今まで俺がこなしてきた絶頂とは、色も形も違っていた。
 いつの間にか呑みこまれて、真っ白に塗り替えられる。色んなところがぽかぽか火照って、カラダが溶けているみたいだ。
 快感が痛みに変わってしまう前に、奴は指の動きを変えて、宥めるように肌を撫でた。脇腹、太腿、がくがくと震える膝を撫でられて、うっすらと目を開けた俺は、両手を握りしめる指が優しく解けていくのを感じた。
「──ね、気持ち良かったでしょ?」
 俺の視線を集めるように、人差し指が俺の前で浮いていた。呼吸に合わせて腹が膨らみ、俺はようやく、臍のの上を伝うモノに気がついた。
 いつの間に達して、いつのまに射精していたんだろう。強い刺激だったとは思えないのに、自分でも驚くほどあっけなく俺は達してしまったようだ。
「やっぱりキミ、開発されてたんじゃないかな。イく時、お尻がヒクヒクしてたよ」
 息が乱れて、胸が熱くて、言葉がうまく出てこない。ただきっと、すごく恥ずかしいことを言われているのだとは思った。握っていた手でシーツを掴むと、汗がじんわり吸い上げられた。
「は……、ぁ……なわけ……あるか……」
 こんな深い快感を味わうのは初めてで──、いや、きっと、久しぶりだった。懐かしさにも似た感情が俺の胸を、カラダを充満させていて、文句を言う口唇から恍惚とした吐息が洩れる。
「本当だよ。確かめてみる?」
 俺は先刻達したばかりで、圧倒的な快感はまだ俺の中に居座っている。ふわ、と、内腿を撫でられただけでぞわりと背筋に震えが走って、体を丸めた俺の腕を指が掴んで引っ張った。
「ぉ、い……なにを……」
 重い体が引き起こされて、導かれるままベッドに手と膝とをつくと、俺の腰を支えるように、奴の手がしっとりと俺の肌に吸いついた。
「いっぱい出てるし、せっかくだから使っちゃおうよ」
 皺くちゃなシーツの上に俺は腕をついていた。するりと腰を撫でた手が、俯いた俺の腹に散らばる精液を集め始める。
 俺は、ぶるりと身震いをした。想像もしていなかった場所を触られるかもしれない、と、思うとソコがひくんと疼いて、そのことに俺は驚いた。
「ゃめ……変なトコ、触るな、よ……?」
「変なトコロって、どこかなぁ」
 俺の尻を掴んでいながら、奴は白を切るようだ。俺はといえば、四つ這いの状態では奴を振り払えずに、力の入らない指でシーツにしがみついている。
 右手と左手に尻がしっかり掴まれて、俺は前のめりになってシーツに倒れこんでしまった。奴の親指に力が加わり、肉が左右に開かれる。三つ目の手が俺の尻にねっとりと濡れた指を宛てがってきて、ぬる、とソレを塗りつけるから、びくんと背筋が震えてしまった。
「やだ、ぁ……ゃめて、くれ……」
 ソコを締めつけようとしても、緩慢なカラダは言うことをきかない。それどころか、する、と周りを濡れた指で撫でられただけで、ソコは勝手に期待してひゅくんと収縮してしまう。
 イッたばかりで敏感になっているのに、ソコをイジられたらきっとまた、気持ち良くなってしまう。──そう思う俺はやはり、こいつの言うように開発されていたのだろうか。
「それじゃあ、挿入るよ。お邪魔しま~す」
 しっかりと準備の出来ない俺のアナルを、指がこじ開けてきた。思わず体を硬くしたけど、ぐり、と入り口をくぐり抜けると、締め出そうと力のこもった肉筒は、ずるずると奴を呑みこんでいく。
「はぁ、あ…あぁあ──ッ」
 達したばかりの蕩けた体にその刺激は強すぎた。めりめりと食いこむ指に肉が勝手にしがみつき、その形を確かめながら奥へと引きずりこんでいく。
「うゎ、ナカ、トロトロだね」
 襞をつつくようにして、指は俺の具合を調べているようだった。濡らされた穴が痒くて仕方がなくて、腰を揺らした俺のソコを指の根本が擦ってくれた。
「ふぅ、あ……やぁ……だめ、だ…そんな……ッ」
 俺が恍惚と息を洩らすと、俺が奴の奥まで指を捩じこんで、満遍なく粘液を塗りつけてきた。右手と左手で尻をゆっくり揉み解して、細かく喘ぐ俺の奥をゆっくりとつついてくる。
「ココ、すっごくエッチだよ。ボクの指に絡みついて、きゅんきゅんしてる」
 なんて恥ずかしいことを言う奴だ。いや、恥ずかしいのは俺のカラダの方だろうか。
 奴の言う通り、汚い場所をイジられて、俺のカラダは悦んでいるようだった。背中をくねらせ、ベッドにしがみついたまま、息をする度卑猥な吐息を洩らしている。
「気持ち良いところ、ちゃんと探してあげるね」
 俺の内側を散々穿った後、奴はそっと指を抜いて、やはりもう一度挿入してきた。指の中ほどまで入れて、くい、と腹の方へと曲げて。色んな所を刺激しながら、俺の反応を窺っている。
「はぁ、ゃめ……ぁふう──ッ」
 尻に思わぬ力が入って、俺は奴の指を絞め上げた。鈍いような、重たいような、痺れるような快感が広がって、ベッドに突っ伏し、腰を掲げて、俺は音のない息を洩らした。
「みいつけた」
 奴の指はその場所から離れずに、指先でぐにぐに押して俺に快感を刻んでくる。そんな場所を触られても不快なだけだと思っていたが、違和感は思いがけない甘酸っぱさで俺のカラダを蕩かせていく。
「やぁ、は……だめ、だ……はぁあ……ッ」
 シーツに頬を擦りつけ、俺は情けない声を出していた。ソコが痒くて、くすぐったくて、もっと強く擦って欲しい。
 何度も何度も、じっくりたっぷりイジられたら、きっとさっきと同じように俺は達してしまうんだろう。それがとても恐ろしくて、だけどそうと知っていて欲しがらずにいられない。
「あ……ッ、あ……ッ、そ、こ……、もっと……」
 俺は、なにを言うつもりだったのだろう。押して、擦って、触って、イジって──。腰を揺すって、尻を振って、そう言う俺はさぞかし淫らでいやらしく見えただろう。
 ベッドの上に四つ這いになって、開いた口から垂らした舌がだらしのない唾液を結ぶ。今夜、既に快楽を味わっていた俺のカラダが酔うのは早く、もう一度そこに連れて行かされると、俺のカラダは崩れてしまって、意識は白く霞んでいった。


   ■   ■   ■


 俺の呼吸が大分穏やかになった頃、部屋の中にいる指は少しずつ減っていった。快感の波に溺れてしまった俺に服を着せた後、奴の手は俺の邪魔にならないように頬や耳を軽く撫でて、いつの間にか元の位置に戻っていた。
 このまま、近づいては遠のいていく心地よさにたゆたったまま、眠ってしまってもよかったけれど、店に戻った方がいい。ティファに心配をかけてしまう、けど、もう少しだけこうしていたい。
 そう思ったまま、どれだけの時間が経っただろう。ようやく決意が固まって、俺は、ふう、と、長い息を吐き出した。
「ン……、ふ……」
 腹筋に力を入れて、肘でベッドを押そうとして、俺は自分の体が予想以上に重いことに気がついた。早く目を覚まさなくては、と、思った俺は頭を振って、ゆっくりと目を開けた。
「ふう……」
 もう一度、俺は深くため息をついた。体を起こすと、頭の中でぱちぱちと泡が弾ける。ベッドの上に腰掛けたまま、頭の上を眺めていると、自分でも気がつかない内に口許が緩まっていた。
「……おい、指」
 白手を嵌めた人差し指を見つめながら、俺は、小さな声で呟いた。
「なんだい?」
 ピカピカと光を放って、奴は応えた。やはり、今までの出来事は決して夢ではなかったのだ。こいつは確かに存在するし、だからといって、自分から話しかけてくることもない。
「……しばらく、大人しくしてろよ」
 俺はそう言うと、ベッドの上から足を下ろした。靴を履くと、立ち上がってベルトを直して、身支度を整える。
 妙な相棒だけれど、きっと悪い奴ではない。こいつがいれば便利なこともあるだろう。……また気が向いたら、今日のように、自慰をするのを手伝わせてやってもいいのかもしれない。
 俺は相棒の剣を背負うと、掌で顔を拭って、す、と、表情を元に戻した。いつまでもニヤけたような顔でいるわけにはいかない。
 そのまま足を踏み出して、部屋の外へと歩いて行く。廊下を渡り、階段を下り、初心者の館の前を通り過ぎると、もう夜も遅いからか、部屋の扉は閉じられていて、中にいた人達も気配も感じられなかった。
 俺はそのまま歩いていって、再び階段を降りていった。ドドドドド、と、機関銃を試射する音が近づいてくる。
 こんな時間だというのに、スラムの武器屋は盛況だ。もしかすると、武器を試す名目で合法的に銃を乱射したいだけかもしれないが。
 武器屋の主人は棚の整理に夢中でいたから、俺が前を通りすぎてもきっと気づかないだろう。特別声をかけるような用事もなく、そのまま店を出ていこうとした俺のことを、呼び留める声があった。
「オッサン、オッサン」
 一瞬、俺のことを言われてるのだとわからなかったが、声は確かに俺に向かって放たれていた。『オッサン』、と呼ばれることに不満はあったが、それを言おうと立ち止まると、キャップを被った少年が俺に近づいてきた。
「あんた、家のベッド使ったろ。タダでとはいかないぜ。使用料、十ギル払ってくれよ」
 そう言うと、少年は俺へと掌を差し出した。
 ベッドを使ったのは事実だったし、生意気な口ぶりからして、彼はこの店の跡取り息子なのだろう。だとしたら、たった十ギル、渡してやっても構わない、が──。
「ああそれから、口止め料として、千ギルもらうぜ」
「口止め料?」
 嫌な予感が、俺の眉を引き攣らせた。財布を出そうとポケットに突っこんだ手を動かせずに、俺の顔がどんどんと強張っていく。
「オナニーする時は、今度からドアは閉めておいたほうがいいぜ」
 俺の傍に近づくと、背伸びをした少年が俺にそっと囁きかけた。顔が、カッ、と熱くなって、口唇が震えてしまう。
 言い訳も思いつかないし、そもそも、誤魔化しようがない。ニヤニヤと笑っている少年に叩きつけるように千ギル札を握らせると、俺はそのまま逃げるようにスラムの武器屋を後にした。
「お前のせいだぞ!」
 深夜のスラムを早足で歩きながら、俺は怒鳴った。道行く人は減ってはいたが、いきなり大声を出した俺が注目されないわけもない。
「……ボクのせいじゃないよ。キミがあんな大きい声でヨがるから……」
「うるさい‼」
 俺は顔を赤くしたまま、地面を踏みつけるようにして店へと急いだ。
 どこまで見られたのだろう、あの子以外に見られてはいないだろうか。
 当分、あの店には顔を出せない。こんな手に好きにさせたのがそもそもの間違いだった。
 色んな思考をぐるぐると巡らせながら歩いていくと、セブンスヘブンが近づいてくる。頭の上に、皆には見えない妙な手首を乗せたまま、俺は逃げるようにして店の中へと駆けこんだ。