あるソルジャーの記録<06>
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「そう暴れるなって。どうせなにも出来ねぇんだから」
両手は手錠に繋がれたまま、目は忌まわしいアクセサリで縛られたまま。迸っていく興奮で暴れたがる俺の体を、痛みと痺れと重さと力が冷たい地面に縫いつける。
「お前ら、これ以上なにかしてみろ、ぶっ殺して―ッ、ぐ…!?」
怒鳴りつけようとした俺の口に、何かが、ぐい、と挟みこまれた。頬を歪ませ、舌を圧し、歯と歯の間に食い込んでくるなにか棒みたいなものだ。
「はぁ? なんだって? 聞こえねぇなあ」
ちくしょう、バカにしやがって。俺はソルジャーなんだぞ、こんな目隠しさえなかったら、お前らなんてメッタメタにしてやるのに。
犬歯の下に口枷が潜りこんできて、俺はそれを思いっきり噛み締めた。柔らかいくせに頑丈な素材でできているらしく、噛み千切れず、舌で押しても動きもしない。
「なぁに、痛いことはしねぇよ。それはさっき、たっぷり試させてもらったからな」
頭の後ろで、ベルトを、ぎゅ、と締められた。そのまま仰向けにさせられて、上げさせられた腕は男の膝に固定された。
「う…ぅう、う……ッ」
言葉は、声にならなかった。邪魔な口枷が俺の抵抗を吸い取ってしまう。
「男に掘られるのは初めてか?」
「心配すんな、それキメてりゃ大丈夫さ」
こいつら、一体どういうつもりだ? なにを言われたのか、俺には意味がわからなかった。
わかりたくない、と言った方が正解だ。吐き出せない怒りが暴れて震え始めた俺の体に、男の指が伸びてきた。
「流石にちょっと盛りすぎたか」
「ソルジャーでも、ちゃぁんと薬効くんだな」
腹の上を、胸の上を、男の腕が這いまわる。やめろ、触るな、その手をどけろ。声を出そうとすると、シリコンを食まされた俺の口から汚い音が洩れてしまう。
「可愛い顔してるくせに、体はしっかりしたもんだ」
「お前まだ十代だろ?」
「よかったぜ。オッサン相手じゃ勃たねぇからよ」
やはり、さっきのは聞き間違いではなかったらしい。こいつら、どこまで趣味が悪いんだ。男に犯されるだなんて、これ以上の屈辱があってたまるか。
「さぁて、それじゃあ始めるか。お前ら、ちゃんと押さえとけよ」
俺の上に乗っかって、男たちが、へへ、と笑う。ぞわ、と体に悪寒が走った。恐れているからじゃない、あまりに不気味だったからだ。
「どこかな、お、ココだココだ」
服は水を吸っていて、肌は冷たく、けれど体は熱かった。皮膚に貼り付く服の上を好き勝手に撫で回す、無遠慮な男の指が、胸の上でぴたりと止まった。
なにをされるのかわからない不安感で、俺の体は縮こまった。両胸の上、その先端を、ぐり、と親指で抉られて、俺は思わず顎を浮かせて、体をびくりとしならせた。
「すげぇ、感度ビンビンだな」
「ったりめーだろ。普通の男でも、あんなもん飲まされたら立ってられねぇぜ」
違う、今のはただ体がビックリしただけだ。目隠しをされた状態では、相手の出方がわからないから―。いや、なにかをされたところで反応するべきじゃなかった。
「そんなトコ触られるなんて、思ってなかったろ」
「普通なら、乳首でも感じるようになるにはしばらく時間がかかるんだがな」
ふざけるな。女じゃああるまいし、感じてなんているもんか。
蹴り飛ばしてやりたかったが、腿の上をリーダーに跨がられていて、腰が左右に揺れただけだった。
「さっきので、服が濡れてるな。脱がしてやろうか?」
腹の上にあった手が服を引っ張り、ゆっくり捲り上げていく。濡れた肌が外気に触れて、ぞわぞわとした違和感が俺の身を竦ませた。
肌の上が騒がしい。体の中身も騒々しい。
俺は、自分の体を持て余していた。自分の体のはずなのに、まったく俺のいうことを聞かない。
「あーあ、固くなっちゃって」
「可愛い色してるじゃねぇか」
顔に傷のある男が、ヒュウ、と、口笛を吹いた。ひどい屈辱だ。男に裸を見られたところで気にすることではないとは思うが、こいつらだけには見せたくない。
「どうだ、気持ちいいだろ?」
胸を掴んで、もみくちゃにして、リーダーの指が乳首を掠める。周りを縁取って、くにくにと擦って―。それだけで頭の芯にはビリビリとなにかが響く。
痛みじゃない、痺れじゃない。じゃあこれは、なんだというんだ。
「もっと好くしてやる。そーれ、グリグリグリグリ」
親指と人差し指で乳首を摘んで、リーダーはそこを強く摘まみ上げた。俺はたまらずのけぞって、じゅる、と、溜めこんだ唾液を吸い取り、喉を鳴らした。
「へへへ、そんなにイイかよ」
「ソルジャーも、ちゃんと乳首で感じるんだな」
違う、こんなのただ、痛いだけだ。否定したくて、拒絶したくて、俺は眉を寄せ、口唇を震わせた。
奥歯を噛み締めたくてもバーが邪魔して、俺の苛立ちは募るばかりだ。あふれた唾液が口唇の端からとろりと滴り落ちる。くそ、なんで俺がこんな目に合わなきゃならない。
「ふぅッ、ンぐ……ふう……!!」
押し潰された乳首が両方、ジンジンと疼いていた。口枷に歯が食い込んで、唾液が溢れ、息が苦しい。
目隠しの下で、俺の目はぴくぴくと動いていた。眼球の底の方がどくどくと脈打つのが自分でわかる。
耳が熱い、胸が高鳴る―、もういい、離れろ、なにもするな。だけど奴らは、この程度で止めるつもりはないようだった。
「さて、下の具合はどうなってるかな」
乳首を、ぐに、と摘まれて、反射的に背中がしなった。痛い、痒い、熱い、疼く。イジられるとたまらなくて、離れられると物足りない。
口枷に舌を押し当てながら、俺はハァハァと荒い息を散らかした。男の指が腹を伝って、ベルトの上に引っかかった。
腿の上にあった重さが、膝の上へとずれていく。やばい、このままでは気づかれてしまう。薬を洩られ、体をイジられ、固くしていた俺の股間に。
「はーい、脱ぎ脱ぎしますよ~」
カチャカチャと音を立てて、二重のベルトが外されていく。やめろ、それ以上は流石にダメだ―。俺の気持ちなどお構いなしに、ゴソ、と服が腰からズラされ、膝が持ち上げられてしまった。
「あーぁあ。ガッチガチだ」
服の上にずるりとペニスを剥き出して、笑う男の声が響く。顔を背けた俺の口から、どろりと唾液が溢れだした。
「へーぇ。ガキのくせに、立派なモンつけてるじゃねぇか」
俺のペニスは十分硬くなっていて、先端をトロつかせながら斜めに反り立っていた。タマの部分をつんつんと指でつつかれて、ビクビクとそこが震えてしまう。
「そら、もっとよく見せろ」
靴の上に服を絡ませたまま、脚が上に持ち上げられた。腕と一緒に足もがっちり固定されて、誰にも見せたことのない場所を隠すことができなくなった。
「いいカッコだな、タマの裏まで丸見えだぜ」
「かわいそうに、震えてるじゃねぇか」
俺は腿を引き攣らせながら、枷をギリリと噛み締めた。恥ずかしくて、腹立たしくて、頭がおかしくなりそうだ。
俺はずっと片親で、母さんにもそんなトコロ見せたことがない。ミッドガルに来てからは、ソルジャーになるために忙しくて、女の子と付き合おうなんて考えてもいなかった。
なのに、今俺は敵であるはずの男たちに、こんな恥ずかしい姿をさせられている。悔しくて、悔しくて―。それなのにカラダが勝手に、気持良くなってしまうのだ。
「どうだ、触って欲しいか?」
ぴん、と、張り出した先端を男の指が軽くつついた。背中をしならせ、腹を引いて、俺はふるふると首を振った。
「素直になれよ、気持ちいいんだろ」
俺の腕を踏みつけた男が、頬をぺちぺち叩いてきた。ふざけるな、そんなわけがあるか。否定してしまいたいのに、そこをイジられると背筋にゾクゾク震えが走って、勃起したモノがとくりと疼く。
「あんたが素直になってくれりゃあ、俺たちだって悪いようにはしねぇ」
憐れみ深くそう言って、リーダーの手が俺をしっとり包みこんできた。それがまた、余計に俺を苛立たせる。
「冥土の土産に、今まででイチバンのカイカン、味わわせてやるぜ」
根本から先端にかけて、五本の指でがっちり握って、じわじわと、ぐいぐいと、俺の性器を扱き始める。やめろ、だめだ、これはマズい。ビリビリと、ぐんぐんと、快感が俺を埋め尽くしていく。
「まずは一発、出させてやるか」
男の手に、容赦はなかった。俺は全ての抵抗を塞がれて、他人の手でどんどん追い詰められていく。
「ふぅっ、う…うう……!!」
体を揺らそうと思っても、目隠しが俺を痺れさせる。体中に残るダメージが俺の体を縛り付ける。
三人がかりの体重で俺は身動きできなくて。扱かれる、ただそれだけで射精感がこみ上げてくる。
「うぅ、う…うぶ……!!」
「暴れるねぇ」
「イきそうなんじゃねぇか?」
俺の足を押さえつけながら、男たちはニタニタ笑う。ちくしょう、絶対イくもんか。だけど、薬のせいで増長していく欲求は堪えられない。
「なんだ、あっけないもんだな」
先端を指で摘んで、リーダーの指がくにくにイジる。ダメだ、そこは、やめてくれ―。せりあがってきた衝動が全身を駆け抜けようとした、瞬間。
―ドンッ、と、大きな音がした。空気が凍り、時間は止まった。爆発しそうな快楽が、体の奥で固まった。
「お、お前は―!?」
やけに間抜けな声が聞こえた。俺の頭はぼうっとしていて、一瞬、わけがわからなかった。
「ぐぁっ」
「ひぃ、助けてくれぇ―!!」
俺は踏みつけられて、痛みに思わず体を竦めた。ドタドタと、走る振動が体に響く。上にいた重さがなくなって、体を伏せた俺の耳に、汚らしい断末魔が響いてきた。
「ふぅ、ふ……ふぅ……ッ」
俺の体には、点された快楽が残ったままで。痺れた口唇からは、どろどろと唾液が地面に滴り落ちる。
びちゃ、と、なにかが俺の頬にかかった。頬だけじゃない、腕にも、肢にも―。
そして香る、鼻をつく臭い。間違いない、これは、血だ。
「……なんてザマだ、クラウド・ストライフ」
部屋の空気は一変していた。一瞬の混乱に、すぐに決着はついたようだ。
それもそのはず。この男が現れて、時間がかかるわけがない。セフィロス、と、呟いた俺の声は、唾液を啜る音に変わった。
「無事か?」
俺は、体を起こしたかった。けれどまだ、俺の体にはいろんな影響が残っていて、力がまるで入らない。
足の上に、逃げ損ねたらしい誰かの重さが残っていた。涎を垂らし、服の脱げた尻を出したまま肩を震わせる俺の方へと、セフィロスの足音がゆっくり近づいてきた。
「ぅ……、ふ……」
ああ、なんたる失態だ。この男にだけは、知られたくなかったのに―。
す、と、セフィロスは体を屈め、俺の腕を掴んで引いた。眉を寄せる俺の顔に、セフィロスの指が伸びてくる。
目隠しが外されて、明かりが瞼に注ぎこんだ。俺の口枷を見つけて、セフィロスはため息を洩らした。
見られたのは、枷だけじゃない。姿も、体も、なにもかもだ。
「……………」
アクセサリが外れたお陰で、痺れはじわじわ緩んでいった。けれど、体はすぐには動かせない。明るさに慣れるまで目を閉じていた俺のうなじに、セフィロスは手を伸ばしてきた。
カチャカチャと、枷の留め具が外されていく。強く噛み締めすぎたからか、口を開けるだけで、顎に、ジン、と痛みが響いた。
「ゴホッ、う…、く……ッ」
俺は、鎖が繋がったままの手首を口に押し当てて、汚れた口を隠し、拭った。膝を上げて、昂ったままの股間を隠す。そんなことをしたところで、今更だとはわかっていたが。
「今から、俺が……大活躍するところだったんだ」
体を縛り続けた麻痺が、ようやく薄らぎ、消えていく。俺は口唇を小さく震わせ、結んでいた睫毛をゆっくり解いた。
「その割に、苦戦していたようだな」
揺れる視界に、跪くセフィロスの胸元が見えた。笑われていると知っていて、俺は顔を上げられない。
「そいつのせいだ、それから……」
忘れた頃に、体にビクリと怖気が走った。体の痺れは抜けたけれど、薬の影響は未だ残っているらしい。
「……………」
うるさい体を黙らせようと、俺は口唇を噛み締めた。俺の様子を見下ろしながら、セフィロスがため息をついた。
ただのそよ風だったのに、それは俺をビクつかせた。セフィロスの顔が見られない。けれど、彼は、す、と左手を上げ、柔い光を紡ぎ始めた。
「ぁ……」
俺は、濡れた喉から小さな声を洩らした。セフィロスが喚んだ淡緑の光が、俺の方へと渡ってくる。
肌の上を滑るように癒しの魔法が伝わって、指先から肩の方へ、首へ、胸へと渡るそれを感じながら、俺は、す、と目を閉じた。
騒がしかった体がするりと宥められて、余計な力が消えていく。体力が回復し、異常が消え去って、体に染みこむ癒しの力がふわりと溶けて消えていった。
「……悪い」
薄く開いた俺の目が、セフィロスをようやく捉えた。クラス1stの手を煩わせたこと、魔法を使わせてしまったこと―。どれへともなく呟いた俺の言葉に、セフィロスは、ふ、と笑って言った。
「気にするな。武器開発の連中に、いい土産ができた」
目隠しを掲げ、セフィロスはそれを興味深げに観察していた。異常な効果を齎すアクセサリは、社に戻っても重宝されるものだろう。
セフィロスの様子を窺いながら、俺は今更な問いを口にした。
「あんた、どうしてここに…?」
「軍から要請があった」
驚いた直後、俺は、ああ、と納得した。2ndとの連絡が途絶えて、軍は怖気づいたのだ。まったく、どこまでも救いようのない連中だ。
「だが、俺が出る幕でもなかったな」
俺は、両膝を立たせたまま両手で懐を押さえていた。俺が目を瞬かせると、セフィロスはいつものように笑みを洩らした。
「お前が大活躍して、奴らを倒すはずだったのに」
邪魔をして悪かった、と、セフィロスが言った。俺は何故か、顔が、カッ、と、熱くなるのを感じた。
俺はもともと、セフィロスに憧れてソルジャーになったんだ。セフィロスと会話するのにも大分慣れてはきたけれど、他ならぬセフィロスに認められていると感じるのは、照れくさいし嬉しいし、なんだかとっても、誇らしい。
「さて、そいつをどうにかしろ」
顔がムズムズして、頬を掻きたくなっていた。立ち上がろうとするセフィロスに、俺は尋ねた。
「どうにかって…?」
上げようとした腰を下ろして、セフィロスが俺を見下ろしてきた。彼の視線を追いかけた俺は、セフィロスがなにを言っているのか、だんだんと理解し始めた。
「外に、軍が待機している。そのまま出て行くのは辛いだろう」
今更、隠しても誤魔化してももう遅い。体の疼きは消えたけれど、俺の股間では興奮して出せなかった欲望が未だ太さを残している。
「だからって…今、ここで…!?」
「見ないでいてやる」
「そういう問題じゃない!!」
思わず声を荒らげてしまった。そんな俺は、きっと顔を赤くしていただろう。
体を硬直させたまま俺が動かないからなのか、膝をついたままその場から動かなかった。火照ったままの俺の肌に、セフィロスの冷静な目が突き刺さる。いたたまれなさに襲われて、俺は立てた膝を擦らせた。
「手錠が邪魔か?」
「そうじゃなくて……」
「急いでるんだ、さっさとしろ」
セフィロスのついたため息に、俺は慌てて顔を上げた。呆れられてしまったろうか、だけど、セフィロスの目の前で一人でできるわけもなく。
俺が手をこまねいていると、無言でいたセフィロスが無造作にグローブを外し始めた。
セフィロスの裸の指を初めて見た。驚いている俺の目の前で、セフィロスは黒い右手を俺の膝の上に乗せた。
「世話の焼ける奴だ」
そのままセフィロスは、指に、ぐ、と力を入れて、俺の膝をこじ開けてきた。足が左右に開けてしまって、俺は慌てて背中を丸めた。
「ちょっ、な…なにするんだよ!?」
「手伝ってやる」
いきなり、なにを言い出すんだ。セフィロスの長い腕が俺の腿の間を割って、隠していた服の中を大胆に探り始めた。
「いいよ、離……ッう……!?」
「いいから、集中しろ」
少しほぐれてはいたけれど、俺のペニスは未だ硬く勃ったままで。そこをギュッと握りこまれて、体から自然と力が抜ける。
緊張した俺の膝を、セフィロスの右手がそろりと撫でる。左手で掴んだ俺のことを、ふにふにと優しく揉みこんで―。
「ぁ…ッ、く……!!」
俺は、ギュ、と目を閉じて、背中を丸めたまま震えていた。セフィロスにそんなことはさせられない、だけど、欲しかった刺激が与えられて、体に興奮が広がっていくのがわかる。
「離して、くれ…っ、セフィロス…!」
手錠の繋がったままの両手で、俺はセフィロスの腕を掴んだ。一生懸命押してみるのに、セフィロスは動かない。それどころかもっと深くまでやってきて、伸ばした指先で陰嚢をつついてくる。
「強がるな。こんなに腫らしているくせに」
くす、と、やわらかな笑みが耳に触れて、俺は思わず目を開けた。鍛えられた太い腕が、足の間に伸びていて、白い指が、広い掌が、俺を握りこんでいる。
「安心しろ、すぐに済む。好きな女のことでも想像していろ」
とろり、と、先端から先走りが蕩け出した。さっき出せなかったから、すっかりだらしなくなっていたようだ。
「く…ッ、ぅ……」
俯き、体を小さく丸めて、俺は肩を震わせた。頼む、も、いらない、も言えないから、セフィロスを掴む指から俺はそっと力を抜いた。
ふ、と、セフィロスの息が俺の頭の上で溶ける。また、笑われてしまった―。恥ずかしくて悔しくて、俺は俯いて口唇を噛み締めた。