JINGLE☆JINGLE<01>
「それで、持ってきてくれたの?」
カボチャの飾りを片付けながら、ティファは言った。
カウンターの上で包み紙をはがしながら、ユフィは満面の笑みを浮かべている。
「今まで、そんなことする余裕なかったじゃない? だから、今年は盛大にやっちゃおうよ」
中からは、若々しい木の鉢植えが顔をのぞかせた。
マリンが目を輝かせて、わぁ、可愛い、と手を叩いた。
「記念碑跡地でも、大っきいの飾るみたいだよ。今頃準備してんじゃないかな」
「あんな広いところで?」
「バハムートがぶっ壊してくれたから、ちょうどいま更地だしね」
あの騒動からそんなに時間は経ってないのに、それ以降のことが激動すぎて、なんだか懐かしいように感じられる。
ティファが包み紙をキレイに畳んでいる間、ユフィがそれをカウンターの済の方にセッティングした。
角度を調整するユフィの傍で、マリンがスツールに乗り上げた。
「飾り付けって、どうすればいいの?」
「じゃじゃーん! ちゃぁんと資料も持ってきたんだから」
ユフィは、古めかしい絵本を取り出した。
見開きに大きく絵が描かれていて、橋の方に短い文章が綴られている。
舞台は、アイシクルエリアだろうか。
窓の外は寒そうな雪景色、そして部屋の中では色とりどりの装飾が施されていて、暖かそうな暖炉が赤く燃えている。
「用意周到ね」
「たまにはね」
自覚していたのか、と、ティファは目を丸くした。
くすくすと笑う口許を隠しながら、ティファは頷く。
「でも、楽しそう。お客さんも喜ぶだろうし」
「ハロウィンも、大好評だったもんね」
訪れる大人たちもそうだけれど、特に、子どもたちはハロウィンをえらく気に入ったらしい。
お客さんに貰ったお菓子が、まだバスケットにいっぱいある。
「じゃあ、決まり。ユフィちゃんと買い物行く人~?」
「は~い!」
マリンは、元気に手を上げた。
ユフィの手から絵本を受け取って、カウンターの内側で、ティファは言った。
「気をつけてね。行ってらっしゃい」
「夕方までには戻るから」
愉しげに出かけていく二人の姿を見送って、ティファは、ふ、と笑みを緩めた。
壁掛け時計を見上げてみると、思ったよりも大分時間が過ぎていたことに気がついた。
前に比べて来客数が増えたから、少し急がないと、仕込みが間に合わなくなってしまう。
絵本を鉢植えの傍に置くと、よーし、と、気合を入れ直し、ティファは忙しく働き始めた。