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瞳を開いたクラウドは、自分がまったく別の世界に立っているのだと知った。そこは先刻までいた神羅ビルではなく、そもそも屋内ですらない。神羅最大の軍事基地、ジュノンの海が、眼前に雄大に広がっていた。 「じきに慣れる」 傍らに佇むセフィロスが、動揺を覚える少年へと声をかける。初めての仮想空間体験に緊張を隠せずにいるクラウドは、自らの両手を見下ろして、ごくりと息を呑んだ。 ソルジャーの訓練用に...
早朝、クラウドはセフィロスの部屋を出た。ソルジャークラス1st専用の居住フロアに他人の眼があるわけではないが、出来る限り周りの人間には知られたくなかった。 セフィロスはいつもの装いで出かけていった。どこへ向かうかは聞かなかったが、クラウドはその背を見送って、兵舎へと戻った。 点呼は毎朝定刻に行われる。人目を避けて集合に参加したクラウドは、何も無かったかのように列に紛れ込んだ。 各隊...
二度の襲撃を受けて、神羅ビルの受けたダメージは軽微ではなかった。その間のビルのセキュリティは全て、治安維持部門に一任された。 ソルジャーたちは外の敵の鎮圧に借り出され、留守を守る神羅軍の業務は増える一方だった。 クラウドは、30時間勤務を経て疲れきった体をベッドに投げ出した。重くシーツに沈む体には、もうどんな力も入りそうにない。制服を脱ぐのも億劫で、クラウドはうつ伏せのまま眼を閉じた。...
先日の襲撃の痕跡を残す神羅ビルのエントランスは、再びジェネシスコピーで溢れていた。迎撃する兵士たちの銃声と、モンスターと化したコピーどもの咆哮、そして逃げ惑う社員たちの叫び声の響くその場は、まさに阿鼻叫喚であった。 その中心で、長い鎌を振りかざし、旋風を繰り出し兵士達を翻弄するコピーの背中を、疾く、そして静かに、一振りの刀が貫いた。そのまま大きく薙ぎ払うと、ジェネシスコピーだったものは地に...
ぼうっと天を仰ぐクラウドは、未だ身動きができなかった。ただ力の入らない体をシーツに横たえて、染み一つ無い天井を見上げていた。 うっすらと意識が晴れて、ようやく自分が眠ってしまっていたのだと気がついた。ここがどこなのか、ふとそのことに意識を向けると、クラウドは体を起こそうと頭を持ち上げた。 瞬間、くらくらと視界が霞んで、ズンと響くような重い頭痛に額を押さえる。何度か瞬きをすると、ようやく...
彼がその部屋に戻ったのは、いつぶりのことだったろうか。滅多に帰ってこないこの部屋の主は、今宵は更に珍しく、一人ではないようだ。 ソルジャークラス1stは、専用の居住スペースとしてフロアを一つ与えられていた。扉を開けて広がるフロアには、本棚とクローゼットが備え付けられている。あとは長いソファーと低いテーブル、ベッドの傍らにテーブル代わりのチェストがあるだけで、あとは体を休める大きな寝台があれ...
一通りの報告を終えたセフィロスと、それを聞いていたラザードとの間には、重苦しい静寂が沈んでいる。 ジェネシスは逃走し、ホランダーを追っていたザックスは行方不明。ソルジャー部門の無様な失態は、ラザードに憎らしいハイデッカーとスカーレットの高笑いを彷彿とさせていた。 立ち去ろうとするセフィロスをラザードが呼び止める。 「……わざと逃がした、わけじゃないだろうな」 向ける背に、彼の鋭い...
「なぁ、頼むよクラウド」 この通り、と手を合わせ、合掌する同僚の兵士に半ば圧されるようなかたちで、クラウドは押し付けられた箱を両腕に抱え込んだ。 「渡すだけでいいんだな?」 「そうそう。それで、この伝票にサイン貰ってくればOK」 「わかった」 「助かるよ。早く行かないとどやされる。あ、伝票は終わったら本部まで届けてくれな」 口早に捲し立てると、慌てた様子で彼は走り抜けていく。 エ...
ミッドガルは、神羅ビルを中心に、八つの街で成り立っている。魔晄エネルギーを抽出し加工する魔晄炉が八台、円状に並び、その中央には神羅ビル本社が聳える。魔晄炉を中心に、零番街から八番街まで街が発展し、世界一の都市が、重厚なプレートの上に出来上がっていた。 眠らない街、八番街。神羅ビル中央エントランスにほど近いこの街は、神羅関係者も多く、不眠不休の彼らのために休むことなく娯楽を提供していた。 ...
ソルジャー部門は、神羅の組織の中でも特別な意味を有していた。 軍事兵器の孤高のブランドを確立した兵器開発部門。研究と開発を目的とした科学部門。ミッドガルの建設と維持を司る土地開発部門。警察権をもつ治安維持部門。大きなプロジェクトを掲げた宇宙開発部門。 そして、神羅の粋を結集して設立された、ソルジャー部門。まだ若いこのセクションを統括するのが、ラザードだった。 世界に誇る私兵団であり...