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神羅カンパニー本社ビルの中でも、ソルジャーフロアを行きかう顔ぶれは、どれも若さに溢れていた。彼らは若いながらも強さを目指し、日々その歯牙を削っている。 神羅軍とは一味違う厳しさを強いられ、厳粛な戒律に縛られている彼らではあるが、青春を謳歌してはならないというルールは無い。そう論じるザックスを眇め、クラウドは素っ気無く言い放った。 「行かない」 「なんで」 すかさず、ザックスは問い正...
ロケット村の周りは、平地に囲まれていた。高い山脈に大陸を分断され、緑豊かな平原が裾を広げている。 夜になって、村からそう遠く離れていない場所に、クラウド一行はテントを立てた。長旅のお陰で、テントを張る彼らの手つきも慣れたものだった。 今夜は、シエラに夕食を御馳走になった。そのまま家で休んでいけと勧められたが、シドがこれを断った。 宿に泊まってもよかったが、慣れてくると野宿というのも...
地方魔晄炉の調査、だなんて、地味な任務だ。華々しい武勇伝とはほど遠く、こんなところで活躍しても、英雄になれるとは到底考えられない。 しかしザックスは、セフィロスは、クラウドは、不満などこれっぽっちも抱いていなかった。彼らはどれも、特別な想いで、狭い貨物車に揺られていた。 大陸を結ぶ連絡船からトラックに乗り継いで、鋪装されていない道を走って、何時間が経っただろう。難儀な体質を持つ少年は、...
初めは、こんな戦いはすぐに終わると、誰もが考えていた。 通わない意見の合理性を武力に求めた結果、多くの人の命が散っていく。重ねられる憎悪、怨恨の連鎖に、やがて皆、理由と意味とを見失っていく。 戦争なんて、いつの時代もどこの世も、大概そんなものだ。 兵力差は歴然。しかし、戦いは長引いた。 ウータイの人々は、女から子供に至るまで、全てが戦士の心を持っている。いくら数を寄せ集めても、...
【 HOPE:CLOUD 】 夕焼けは海に沈んで、紅を散りばめた波を夜が追いかけていく。見渡す限りの、大自然。緑豊かな森は砂浜近くまで広がっていて、寄せては返す小波は、爽やかな夏の香りを運んでいた。 ボーンビレッジでの仕事を終え、クラウドの荷物は軽くなった。今日は時間を巻いてきたから、最後の仕事のための時間はたっぷりある。待たせていたフェンリルに指を伸ばし、クラウドはそのボディをいたわっ...
【 HOPE:TIFA 】 クラウドが帰宅したのは、日付も変わろうかという、深夜のことだった。 外の蒸し暑さに比べ、店の中は涼しくて心地が好い。平日だからか、もはや客の姿はなく、カウンターテーブルに使用済みのグラスがいくつか集められているのみだった。 クラウドは静かに、店の奥へと歩みを進めていった。 表には『CLOSE』の看板がかかっていたから、もうみんな眠ってしまったのかもしれない...
【 HOPE:UNKNOWN 】 夏の季節が、またやってきた。今日一日の仕事を終え、クラウドの荷物は軽くなった。 始めたばかりの運搬業は、快調な滑り出しだった。クラウドはこの日、補給物資を届けるため、大陸を渡ってボーンビレッジを訪れていた。 雲に隠された夕焼けが海に吸いこまれると、少しだけ世界は涼しくなる。波の運んできた海風も手伝って、日の照りつける昼よりはいくらか過ごしやすい。 け...
【 HOPE:AERITH 】 「…っていうわけ。さ、書いて」 そう言って、ユフィはメンバーに紙切れを差し出した。それを受け取ったシドが、煙草の煙を燻しながら歯笑いを見せた。 「自分たちの記念日に他の奴らの願いまで叶えてやろうだなんて、豪気な夫婦じゃねぇか。気に入ったぜ」 早速ペンを走らせようとするシドの隣で、バレットが紙を受け取った。 「なんでもいいのか?」 「もっちろん! なんで...
ミッドガルの中央を陣取る神羅カンパニー本社ビルに、ないものなどない。しかしツォンがいかに優秀であろうと、それを探すのは一苦労だった。 絵の具やペンキなど、誰が何に使うというのだ。これまでそういった類のものと無縁だった少年の突発的な命令に、ツォンは動揺を隠せないでいた。 幼稚園でもあるまいし、社内にそんなものがあるとは考えられなかった。期待薄でほうぼうあたってみた結果、見つかったことにか...
「退屈だ」 ルーファウスがそう吐き捨てるのは、もう何度目になるだろうか。少年は相変わらずの仏頂面でそれを口にし、一方ツォンは、相変わらずの無表情でそれを受け流した。 この星で絶大な力を持つ一大企業、神羅カンパニー。その社長、プレジデント神羅の一人息子で、副社長に就任したばかりのルーファウス神羅は、本社ビルの片隅で時間を浪費していた。 後継者として育てられてきた彼は、なるほど有能だった...